えりやきとせんべい──地域で入れ替わる言葉と、家族の味の記憶

朝シリーズ

あなたは、子どものころの「食卓の味」を覚えていますか。 苦手だった味、好きだった味、家族の気配と一緒に思い出す味。 そのどれもが、今のあなたの記憶のどこかに残っているはずです。

私の子ども時代の食卓は、今とはまったく違うものでした。 かまどの火、麦の混ざったご飯、苦い豆腐、しょっぱい漬物。 そして、地域によって名前が入れ替わる不思議な食べ物「えりやき」。

今回は、そんな昭和の食卓の記憶から、 “味覚と地域と家族”が教えてくれた気づきをお話しします。

あなた自身の記憶と重ねながら、読んでみてください

■ 山ひとつ越えるだけで、食べ物の名前が変わる不思議

あなたの地域にも「そこだけの呼び方」はありませんでしたか。

私の里では「えりやき」と呼んでいた、油を引いたフライパンに、引いた粉を水でといて焼いたものを、 山をひとつ越えた向こうの里では「せんべい」と呼ぶ。 逆に、こちらで「せんべい」と呼ぶものを、 向こうでは「えりやき」と言っていた。

たった数キロ離れただけで、言葉も食べ方も変わる。 情報がすぐ広がる今では考えられないほど、 集落ごとに“暮らしの文化”があった時代でした。

読者のあなたの地域では、どんな違いがありましたか。

■ 子どものころ「まずい」と思った味が、大人になると変わる理由

あなたにも、昔は嫌いだったのに今は好きになった味はありませんか。

私は子どものころ、食べられるものが限られていました。 自家製豆腐は苦く、漬物はしょっぱく、 味噌は独特で、うどんの汁も子どもの舌には厳しかった。

でも、大人になって父の打ったうどんを食べたとき、 その味が懐かしくて、涙が出るほどおいしかった。

味覚は変わる。 そして、記憶が味を変えることもある。

■ それでも“えりやき”はまずい

読者のあなたにも「どうしても好きになれない味」はありませんか。

えりやきは、粉を水で溶いて焼いただけの素朴な食べ物。 砂糖醤油で食べるのが普通だったけれど、 甘いものが苦手だった私は醤油だけで食べていた。

正直に言えば、えりやきはまずかった。 今食べても、たぶんまずい。

でも、畑で家族と食べたえりやきは、 空腹と疲れが味を変えてくれて、 その時だけはおいしかった。

まずいのに、忘れられない味。 それは、家族と過ごした時間の味だから。

■ 味の記憶は、家族の記憶でもある

あなたの家の「家族の味」は何ですか。

自家製味噌で漬けたキュウリや茄子はしょっぱくて、 商店で売れている味噌のほうが好きだった。 でも今では、ただ懐かしい味。

母は後にドーナツを作ってくれるようになった。 偏食だった私に、母はきっと苦労したのだと思う。

母方の祖母は、ふきのとう、を刻んで砂糖味噌と混ぜて焼いてくれた。 青森の義母に聞くと、青森にはそんな食べ物はなかったという。

地域が違えば、食文化も違う。 でもどの地域にも、 家族の味、家族の記憶がある。

■ 結び:あなたの「懐かしい味」は何ですか

この記事を読んだあなたにも、 きっと思い出す味があるはずです。

  • 子どものころ嫌いだった味
  • 家族が作ってくれた味
  • 地域だけの不思議な食べ物
  • 今はもう食べられない懐かしい味

味の記憶は、人生の記憶そのもの。 あなたの“家族の味”も、きっと誰かの心を温めるはずです。

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