~蕎麦屋を一日で辞めた日~
蕎麦屋を一日で辞めた日~
源氏家族で働いていた頃、店長との関係に疲れ、私は転職を考えていました。
そんな時に見つけたのが蕎麦屋さんの仕事でした。
電話で面接の日程を相談した時の女性の対応はとても親切で、私は安心しました。
それまで高校生や大学生に囲まれて働き、個性的な店長の下で仕事をしていたので、落ち着いた大人の対応に感激したのです。
接客の仕事であることも魅力でした。
私は接客が苦手ではありません。
源氏家族でも経験がありましたし、お客様と接することは嫌いではありませんでした。
面接で感じた違和感

面接の日、待っている間、テーブルの上にあった注文書を見ようと手に取った、
覚えておこうと思ったからです。
ところが、面接の女性は私の手からその注文書をさっと取り上げ遠くに置いた、何か違和感を感じました、
今思えば、その時に感じた違和感を大切にするべきだったのかもしれません。
初出勤の日

初出勤の日、まず教えられたのは掃除でした。
玄関掃除、トイレ掃除、床掃除。
掃除が嫌だったわけではありません。
私は昔からきれい好きで、掃除はたくさん経験してきました。
驚いたのは、まるで何もできない人のように手取り足取り教えられたことです。
一方で、料理の種類やお盆の配置など、本来覚えるべき接客の仕事は後回しでした。
さらに疲れて壁についた時に手を払われた出来事もありました。
その瞬間、私は限界を感じました。
「今日で辞めます。明日からは来ません」
と伝えました。
すると、
じゃあ今日の分の給料を払います

と言われましたが、
「いりません。仕事着のクリーニング代にしてください」
何も仕事をしていなかったのです。
店長である女主人公は私に言いました、「あなたは教えられたことが、直ぐ頭に入るんですね、私と同じ年なのに凄いですね、」私は心の中で思いました。
「掃除がですか?」と。
最初は何を言っているのか分かりませんでしたが、その時はまだ60を過ぎたばかりでした、もうろくするには早過ぎる、私がおバカな老人だと思いこみ、接してきていた、それでは合点がいきました、
今でも思います。
もしあの日、無理をして働き続けていたら、私は自分らしさを失っていたかもしれません。
仕事は大切です。
でも、自分を大切にすることはもっと大切です。
あの日の私は、一日で辞めるという選択をしました。
それは逃げたのではなく、自分を守るための決断だったのだと思っています。


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